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コンタクトレンズをしていると眼が充血する(1)ハード編

[2005.04.14]

コンタクトレンズユーザーの皆さんと話をしてると、眼科には受診されなくても「充血するんですけど、大丈夫でしょうか?」と、充血を気にしておられる事があります。
一言で充血といっても、いろんな要因があります。結膜炎や角膜びらん、角膜潰瘍、アレルギー性結膜炎等、炎症のあるものは治療の対象となりますし、その場合は痛みやかゆみ、メヤニが多い等の症状があります。今回はそういうはっきりした訴えのない充血について考えてみましょう。ソフトレンズ系とハードレンズ系で話がかなり異なるので、まずハードレンズのお話をしていきます。
ハードレンズのユーザーが一番良く遭遇する充血は、夕方になると起こる角膜左右の充血だと思います。朝は大丈夫だけど、仕事でパソコンの画面を一日見ていたら、だんだん疲れると共に左右が充血してくる。それだけでなく、ごろごろしたり、乾燥感が強くなったり、レンズを外したくなるような感じが出てきます。
このような場合、角膜をフルオレセインという特殊な液で染色して見ると、下の図のように角膜の左右に点々と染まる部分(緑に光っている)が出来ます。この染色のある部分が角膜の表面にキズがある角膜びらんです。時計の方向で3時と9時方向が染まる(=ステイニング)ので、3時9時ステイニングと言われ、ハードレンズにしかおこりません。

原理を下の図に示しますが、ハードレンズをしているとその裏側に涙を吸い込むため、角膜周辺のHCLに覆われていないところが乾燥します。その上、瞬目(まばたき)をしても、瞬目で最後まで覆われず、かつ開くとき最初に露出する眼の左右のバンド状の部分が乾燥します。その二つの効果が共通して現れるのが角膜の3時9時で、そこが乾燥してキズが付き、充血してきます。その上、20台後半からは、その部分にはまばたきによって「瞼裂斑」というタコ状の盛り上がりが結膜面(シロメ)にできて盛り上がるので、余計にそのまわりが乾燥してキズができやすくなります。

パソコン作業をする方では、まばたきの回数が減っており、正常15~25回/分の瞬きが5~10回/分になります。また、涙液の分泌は午前中多く、午後に少ないので、余計に乾燥してしまい、夕方になるとキズが強くなりごろごろするわけです。瞬きが少ないと、ハードレンズが上瞼にくわえこまれて引き上がる機会も減り、ハードレンズが角膜の下の方に止まったままになりやすい(下方固着といいます)ため、そこの角膜が酸素不足になり、余計に充血したりハードレンズを外したくなるという場合も有ります。
では、どのようにしたら、この充血や異物感、乾燥をましにできるのでしょうか。
それは、今の発生機序から明らかですね。
1)瞬きを意識的にしっかりしましょう。特にパソコン作業では瞬きが途中までしか行かない不完全瞬目が多いので、下までしっかり閉じて瞬きをしましょう。
2)人工涙液の点眼を頻繁に行い、瞬きによって角膜全体にまわしてみましょう。眼科でヒアルロン酸製剤(ヒアレイン、ティアバランス等)を処方してもらうと、単なる人工涙液より角膜の上で長く滞留して涙の膜を安定化させますのでより楽になります。
3)それでも駄目なら、パソコンなど仕事中はハードレンズを止めて、メガネに出来る時はメガネにするのもいいでしょう。ハードレンズをしているのとメガネでは、涙液の蒸発が2~3倍違うと言われています。
4)それでも充血が多いなら、下方固着しやすいハードレンズをしていることが多いので、ハードレンズが動きやすいような、もしくは3時9時ステイニングの起こりにくいハードレンズに処方を変えてもらうことが出来る事が有ります。主にレンズの直径を変える事が多くなります。
5)しかし、4)の方法は難しく、どんな場合でも充血を解決できる訳ではないのです。解決できない場合は、ソフトレンズ系にすれば、3時9時ステイニングとそれに伴う左右の充血は改善できます。

これを書いた10年前と異なり、現在はソフトレンズ系でもシリコーンハイドロゲルレンズを使えば、ハードレンズの充血と乾燥感を一気に改善できるようになりました。ただし、ソフトレンズ系はどうしても違和感が残るという方もおられるのが残った問題となっています。

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