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加齢黄斑変性症に対するiPS治療最前線

[2013.01.29]

副院長の久保田です。H25.1.26に福岡で行われた第36回日本眼科手術学会総会に参加してきました。
当日、白川分院は代診の先生にお願いしご迷惑をおかけしました。
内容が専門的でわかりにくい内容かと思いますが、イワサキコンタクト白川のブログには図と写真入りで同内容をアップしておりますのでよろしければご覧下さい。
http://blog.goo.ne.jp/shirakawa_iwasaki/e/f888ebbac6203542a94b890ec937f2e9
今回の学会で一番勉強したかったことが 栗本康夫先生(神戸中央市民病院、先端医療センター)のRPE移植です。とても素晴らしい研究報告でした。
まず加齢黄斑変性症(以下AMD)は我が国の失明原因疾患の3位にあり現在急増中の疾患です。1位は緑内障。2位は糖尿病網膜症(2004年)
今後さらに高齢化社会になることを考えるとさらなる増加が考えられます。
現在はいくつかの薬物療法が出てきましたが手術治療の対象となれば恩恵を受ける患者数ははかりしれない。
最近登場した抗VEGF療法と呼ばれるるルセンティスやアイリーアによる硝子体注射による治療方法は新生血管の抑制・除去を目的とするものであくまでも対症療法です。
もしも病変の起こる網膜色素上皮(RPE)を治療することができれば根治療法となる。
従来にも同様な網膜色素上皮移植ということが行われたことがありました(ヒト胎児RPE移植、自家RPE移植、自家RPEシート移植)が拒絶反応、生着不良、重篤な合併症などで実用化されることはありませんでした。従来のRPE移植については他家移植には、免疫学的・倫理的問題があった。自家移植の場合は手術侵襲が大きい。
そこでiPS細胞を用いることにより免疫学的問題と倫理的問題を回避しドナー採取も最低限の侵襲にとどめられることが可能となります。
ここまでをまとめると網膜色素上皮移植にiPS細胞を用いる利点は
1)倫理的問題の回避(胎児、胚、あるいは他人の細胞をもちいなくて良い)
2)免疫学的問題の回避(自己の細胞を用いるので拒絶がない)
3)手術侵襲が少ない(細胞は表皮の採取だけで良い)ということです。
今後実際に患者さんへの治療が可能になるには(1)非臨床試験(2)臨床研究(3)事業化・治験といったことをへていかなければなりません。
現在は(1)→(2)へという段階まで進んできているとのことでした。
実際に治療に用いる網膜色素上皮(RPE)シートを作成し、安全でかつ確実に網膜下に挿入するためのディバイス(手術器具)の開発が行われました。
浸出型AMDに対するRPE細胞シート移植の手順です。
ます患者の皮膚組織を直径4mm程度採取→組織よの繊維芽細胞より患者本人のiPS細胞を樹立しRPEを分化・誘導し細胞シートを作成。
実際患者さんへの移植は手術的に行われます。型どおりの硝子体手術・後部硝子体剥離作成→網膜切開を行い脈絡膜新生血管を抜去。
人工的網膜剥離を作成・拡大し移植用ディバイスを用いてRPEシートを移植、シリコンオイルまたはガスタンポナーデを行います。
皮膚組織を採取してから細胞シートが作れるまでには約7か月程度かかるようです。
実際にサルに移植する映像なども供覧されました。
まとめですがヒトiPS細胞から形態学的・機能的に成熟したRPEシートを準備することができた。
医療機器として認可をうけているカニューレを利用して移植用ディバイスを用いて開発網膜下に豚眼、家兎、サルで成功したとの報告です。
ノーベル医学賞を受賞された山中伸弥教授によるiPS細胞が今後実用化されればとても素晴らしいことですね。
そういった新しい治療方法が日本で開発されていることをとても誇りに思います。
最後にこのプロジェクトのチームリーダーの高橋政代先生の紹介されているHPをご紹介します。
http://scienceportal.jp/HotTopics/technofront/08.html

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