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こどもはどうして近視になるの?

[2013.04.19]
春になり、新学期が始まりました。しばらくすると、こどもさんが「視力測定結果のお知らせ」を持って帰ってくる家庭が多いと思います。こどもの近視はどういうメカニズムで進行するのでしょう?
眼の構造はカメラと同じになっています。

眼の表面の角膜、そして虹彩の後ろにあるレンズ(水晶体)が凸レンズになっていて、これらが光を集めて網膜に像を結びます。これを図にすると次の図にようになります。

近視も遠視もない眼を「正視」と呼びますが、正視の眼ではこの図のように、無限遠からの平行光線が網膜に焦点を結ぶため、焦点の合ったきれいな像が見えます。
ここで、近くはどうして見ているのでしょう?近くからの光は散って行くように進むので、そのままでは眼の凸レンズによる集光力が足りないため、網膜の後ろに焦点を結んでしまいます。

凸レンズは分厚くなればなるほど集光力が上がりますが、人間の眼では、筋肉の作用で水晶体が分厚くなって、集光力を上げ網膜に焦点を結ばせます。眼はオートフォーカスカメラなのですね。これを「調節」と言います。年をとって(といっても45歳以上)水晶体が硬くなり分厚くなれなくなると、網膜に焦点が合わなくなります。これが「老視」、一般に言う老眼です。
さてこどもの近視ですが、まず近くのものを見続けます。すると水晶体が調節のため分厚くなります。そのままずっと近くを見続けると、そのまま筋肉がけいれんして固まってしまい、近くを見るのを止めても、遠くに焦点が戻らず近くしか見えないのです。これを昔は「仮性近視」と呼びましたが、現在は「調節けいれん」と呼びます。
この状態なら、もしかしたら近視の治療が出来るかもしれません。このけいれんを止める為に、まずミドリンMという点眼薬を使います。筋肉を強制的にマヒさせてけいれんを止めますが、点眼すると7時間くらいはピント合わせが出来ず、近くが見えないため、毎日寝る直前に点眼してもらいます。しみますよ(笑)
また、近く⇔遠くに交互にピントを合わせるトレーニングをさせる機械を使う眼科もあります。このトレーニングは一回5分程度です。当院でも行っていますが、私の個人的な意見としては、週一回、4週間行っても視力の改善が見られなければ、それ以上やっても無効だと考えています。このあたりは個々の先生によって意見が異なり、全く無効と考えている先生も居られますので、主治医の先生にお聞き下さい。
これで視力改善が得られる確率は、個人的には小学校中学年(3-4年生)で30%程度だと思います。まったく近視が無くなるとまでは回復せず、次に述べる軸性近視でメガネを掛けなければいけないのを、半年でも一年でも遅らせられれば良いかなという程度の効果です。それでも視力が落ち出した頃には、一度は試してみる価値がありそうです。なお中学生や高校生になってからの場合は、効果があまり無いと考えています。
この状態が続くと、どうも眼内に伝達するシグナルが出るようです。そのシグナルは眼球に「眼を伸ばせ」と言います。そうすると眼はこのように延びてゆきます。

そして、近くからの光が焦点を合わせるところまで延びて行きます。そうすれば、調節をしなくても近くからのものに焦点が合いますが、遠くのものは見えません。これを「真性近視」もしくは眼の軸の長さが延びるので、「軸性近視」と言います。
この状態になると、もう近視の治療は出来ません。メガネやコンタクトレンズなどで矯正するしか無くなります。また、進行してきた近視を途中からトレーニングにて改善させる事や、全く無くす事も出来ません。
では、近視になっていくのを予防するにはどうすればいいのでしょう?それは上のメカニズムから自ずと明らかになっていますね。
つまり、
「近くをずっと見続ける(=調節をずっと続ける)ことをしない」
です。
こういう観点で見れば、テレビを使用してするゲーム機より、ポータブル型のゲーム機、3DSやPSPが良くないのはよく判ると思います。私は個人的にはこれらを「近視製造機」と呼んでいます。連続して使用して調節けいれんを起こす事が良くないので、私は小学生には「低学年は一回30分で終わり。高学年なら10分眼を閉じて一休みして、もう一回30分、計1時間まで。」とお願いしています。
また、ゲームをしないこどもさんでも、お絵描きや本読みの好きなこどもさんは多いと思います。その姿勢を良くみてやってください。集中すればするほど近くに寄って行き、お絵描きをしている女の子などは15cmくらいになっています!親御さんには、
「近過ぎたら、おでこと紙の間に30センチの物差しを突っ込んでやって!」と言います(笑)
うちにも小学生の子供が居ますが、ゲーム機(タイマーを掛けて、私の目の前だけで遊び、30分で打ち切りです)やお絵描きで近すぎれば
「近い!」
と一言言いますし、テレビにどんどん近づいて行く時は、
「パパは別にあんたが近視になってメガネかけてもいいんだよ。ママもパパもメガネやコンタクトだから、絶対いつかはメガネがいると思うから。でも今メガネになるのと、中学生になってからと、どっちがいいの?!」と言います。
そうするとうちの子は涙目になって、
「今はいや~~。」
と言ってちゃんと下がりました。お試しあれ(笑)
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